1 音楽(クラスィック=「西洋芸術音楽」)を“一生の友”とするには。「受容(鑑賞※1)留意点」
※1.芸術作品をプラスの方向で評価し、受け容れる行動。好き嫌いを超えた客観的判断基準が必要。その意味で近年は「受容」が使われる。
① | まず、聞くにあたって好き嫌い、良い悪い、分かる分からない等の2分法的なアプローチは置いてください。 音楽そのものをありのまま、むしろプラスの方向で自分にとって関心のある部分を捜すのです. これはふだんの生活でも思い込みや、極め付けによる誤った対応をせずに済ます大事な生活の知恵です。 ちなみに“好き嫌い”は英語に直訳すると likes and dislaikes となりますが、 ネイティブの意訳では selfishness・わがままとなるそうです。 “価値判断基準は「好き嫌い」、「良い悪い」(その実「損得」)、にあらずして、「美醜」である。”と言われるのは、 その場次第でコロコロ変わってしまうか、それとも一貫性・普遍性があるのか、が基準としての分かれ目となるからです。 その点で現代日本における”好き”の使われ方では、とうてい判断基準にはなり得ません。まして、進学や結婚等の理由にするには非常に問題が大きいと言えます。”好き”だったら一貫して”一生を通して死ぬまで好き”であれば、話は別です。 また、「表現」と「受容」は両輪の輪です。表現能力を身につけるには受容能力の向上が欠かせません。 自分の食わず嫌いで作品に対さないことが、表現能力を身につける鉄則です。 |
② | 次に、始めに気づいた特徴と作者、時代、国民等の各様式とを結びつけ、それをヒントとして曲を味わいます。
芸術作品は様々な様式の上に成り立っています。「様式」とは“らしさ,スタイル“です。
例えば作者がベートヴェンらしい、またはショパンに似ている等と感じる「個人様式」,生まれ育って影響を受けた「国民様式」,生存した時代・社会で共通体験をした「時代様式」,堅苦しさ,または夢想的な感じ等(=バロック,ロマン派)の「流派様式」等々です。これらの様式は、強い特徴があり気づきやすいので、これらを手がかりにすることができれば、 他の数多くの特徴・魅力にいち早く気づけるようになります。 始めに気づいた特徴と作者,時代,国民等の各様式とを結びつけ、ヒントとして味わうことから始めましょう。 ←「芸術鑑賞(受容)教育は様式教育である。」(予定ラインナップ3) |
③ | 作品の特徴を自分なりに捜し、口づさめるようにする。 「特徴」は個性・オリジナリティーでもあり、その点で名曲の条件である普遍性に繋がります。 「個性」はわがまま、目立ちたがりと違い、「特殊性」、「普遍性」とのバランスの上に生まれるからです。 また“自分なりに気づく”とは自分の個性が作品の個性に反応したからに他なりません。
その点では音楽・芸術、ひいては文化を受容することは、無意識の深淵に沈んでいる自分捜しと言えるでしょう。特徴の殆どはメロディーに現れます。次いでリズム、響き〔ハーモニー、音色を合成する楽器編成〕に、です。 他に多いのは、-特に現代曲では- 感じ・イメージです。 |
④ | 特徴が覚えられたら、それらが繰り返されているか?、繰り返されているとすれば何回か? 全体で曲想の変化するところは大きくいくつに分かれているか? 演奏している楽器は何か? 他に目立つ特徴はないか?等に注意を払います。 |
⑤ | その後に専門用語を調べる,手に入れば楽譜で確認をする,作品の背景(時代性・社会性),作者の人となりetc.と続きますが、大事なのは、1つ識る、または確認したら、それをヒントとして何度も聴くことです。
それにより自分の感じ方、求めているものを確かめる事ができるのです。 また他の新しいこと (・無意識の自分) に気づき視野も拡がることでしょう。 コンサートであればこれらはプログラム・ノートとして載っているので、早めに行って目を通し、自分なりの聴くポイント(主に構成・形式 ←“音楽美は形式美である.”ハンスリック)を見つけておくことです。譜例が載っていれば歌って覚え込み上記④に備えます。 |
なお、上記③、④は9年間の小中学校の授業で身につけてある「観賞(受容)留意点」でしたので、退屈と感じた人が多かったことでしょう。―『学習指導要領』
その他のメリットとしては、聴くために時間を管理する習慣がつき、生活にメリハリがつくので快い緊張感と弛緩を味わえ、息抜き、または気分転換をする手立てとなります。その上、集中力も付き、柔軟性に富んだ視野が身に付きます。
以上の受容ポイントを私の作品に応用する手掛かりについてこのHP後載の「作品リスト」(含、出版・CD制作リスト)が役立つように工夫してあります。
また、作品を理解する助けとなる「作者の人となり」に関しては、以下に私の「音楽」に対する態度、距離の取り方でもある「音楽観」を紹介します。
「音楽」は「芸術」の1部であり、その「芸術」は「文化」に属すので、音楽観の内容としては、芸術観,文化観も含みます。